これからの「正義」の話をしよう(マイケル サンデル)

正義の議論に関して、

古代哲学は美徳の定義を出発点としているのに対し、

近現代哲学は自由を始まりと設定している。

そして現代において対象となっているものとは、

美徳」とは何かということである。

 

正義に対する3つのアプローチがある。

1つ目に福祉の最大化という考え方である。個人の損得よりもそれが全体に利益をもたらすのかという考え方に基づいている。代表的な提唱者に、ベンサムやミルがいる。

2つ目が、個人の権利を尊重するという考えに基づいた「自由主義」的な考え方である。カントやロールズによって支持された考え方である。

最後が、「美徳」に関する議論であり、「美徳とは何か」が彼らの関心の的となっている。

 

功利主義の欠点①‐個人の権利の無視

古代のコロッセウムが良い例である。

猛獣が放たれた闘技場に人間が放たれ、多くの観客がそれを見て興奮する。

全体的な利益はプラスでも、「正しさ」の面からいえば、疑わしい。

 

功利主義の欠点②‐価値の単一化

個人を犠牲にして手に入れようとしている価値が、

すべての人に合致する価値観であるとは限らない。

結局功利主義は独善的な結果を招く可能性がある。

 

自由主義への反論

自由主義が掲げる人間の責務は2つある。

1つ目は自然の責務であり、他人を傷つけないなどが相当する。

2つ目は合意に基づく責務である。

この2つの責務に関して欠落しているのは、

これでは国や公共機関に対する責務が抜けているという点である。

ここで追加されるのが連帯の責務であり、物語論的解釈に基づいている。

 

上記の2つのアプローチに対して、

サンデルが適切だと考えるものが、「美徳」に基づく考え方である。

それらは、宗教や個人的信条から政治や問題を切り離すことは不可能であると考えており、それらを包括したものであるべきだというものである。

ただし、彼は現在までに様々な人達が中立であることを試みてきたが、失敗に終わっていることを挙げ、逆にリンカーンキング牧師などの歴史的に称賛に値するとみられている人物というのは、彼らが持つ、宗教的観点が多大な彼らの思想に多大な影響を与えてきていることに言及している。

 

 

 

キーワード

正義への3つのアプローチ

福祉

自由

美徳